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market-analysis2026-02-01

2026年1月最終週 貴金属相場大荒れ

Written by Admin
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2026年1月最終週の貴金属相場は、失速してから下がったというより、強い上昇の途中で突然向きが変わった、という動きだった。1月前半から中盤にかけて、金・銀・プラチナはいずれも明確な上昇基調にあり、多くの参加者は「まだ続く」という前提で動いていた。その流れの中で、後追いの新規参入者や短期目線、レバレッジを伴うポジションが積み上がっていた。

向きが変わったあとの下げは、はっきりと急激だった。段階的に崩れるというより、短い時間に売りが集中し、値幅が一気に広がった。反発の兆しはあったが、どれも続かず、戻りとして形になる前に吸収された。結果として、相場に「戻る時間」がほとんど与えられなかった。

日足ベースで見れば、この下落は歴史的と呼んでも差し支えない規模だった。金や銀では、過去数十年を振り返っても例の少ない下落率が一日に集中して現れた。ただし、それは長期トレンドが否定されたことを意味しない。短期の値動きとしては異例だったが、構造全体が崩れたと断定できる段階ではない、という位置づけになる。

週後半に入って、銅や原油、株式といったリスク資産が不安定になり、それに引きずられる形で貴金属も下に動いた。何か一つのニュースに反応したというより、ポジション整理が連鎖したように見えた。最初に崩れたのは、弱気の見方が勝ったからではない。上方向に積み上がっていた分だけ、そちらのほうが先に耐えきれなかった。

反転そのものよりも、そのあとに始まった理由探しのほうが印象に残る。値動きが先にあり、説明は後から追いついてくる。今回もその順番だった。FRBの人事、トランプの姿勢、ドル安、金利やインフレ見通しと、使えそうな材料が次々に並んだ。どれも完全に間違いではないし、どれか一つに決めきることもできない。

その曖昧さは、トランプをめぐる解釈に特に表れていた。ハト派に転じたとも読めるし、ドル安を恐れて沈静化を試みたとも読める。さらに言えば、象徴的な人事でしか手を打てなかった、もう直接的には止められない段階に入っている、という読みまで成り立ってしまう。

どれか一つに決まらない、という感触が残る。だから相場も、方向を決めきれない。1月最終週にまず下がったのは、結論が出たからではなく、重くなっていた側が一度ほどけただけだった。もしこのあと売りが積み上がりすぎれば、同じ理屈で逆側が崩れやすくなる。

ここから先は、値動きというより構造の話になる。

金とプラチナは、一度買われたあと、必ず市場に戻ってくるものではない。新規参入者の一部が短期売買をやめ、「持っていればいい」と考え始めた瞬間、その金属は実質的に市場から退蔵される。需要が増えたというより、供給の一部が抜け落ちたような状態だ。

特にプラチナは市場が小さく、在庫の所在も見えにくい。工業用途と投資用途が混ざっていて、どこに滞留しているのかが分かりづらい。その分、新規参入者の一部が退蔵に回るだけで、流通量への影響が早く、はっきり出る。

今回のように短期勢が整理される局面でも、そのすべてが市場から消えるわけではない。一部は、そのまま売らない側に移る。そうなると、相場は軽くなる一方で、下には以前ほど動かなくなる。調整は入るし、値幅も出るが、過去の下値まで素直には戻らない。下値が静かに切り上がっていく、という変化が残る。

一方で、トランプの人事がドル安を沈静化する一手として受け取られるのか、それとも、もう手遅れで象徴的な対応しかできないことの表れと読み直されるのかは、まだ分からない。もし後者の解釈が広がれば、ディベースメント取引は再び前提として戻ってくる。その取引は派手なものではなく、ドルを積極的に売るというより、ドルを長く持たない、実質価値が残りやすいものへ静かに移す、という形になる。

いまの金とプラチナは、上では政治や通貨をめぐる物語が揺れ続け、下では新規参入者の退蔵によって物理的な支えが少しずつ出来ている。上下で別の論理が同時に働いている。

2026年1月最終週の調整は、短期的には歴史に残るほど急激だった。一方で、それは結論を示す動きではない。偏りを一度ほどき、どちらにも行ける状態に戻った、その途中だった、という記録として残る可能性が高い。