2026年4月29日の金属相場概況
2026年4月29日朝時点の金属市場は、安全資産需要よりも、原油高が押し上げるインフレ警戒と、それに伴うドル高・米金利上昇の影響が前面に出ている。ホルムズ海峡をめぐる緊張がなお解消しておらず、原油は高止まりしているが、そのことが今回はゴールドの素直な追い風にはなっていない。市場の関心が「地政学リスクそのもの」から、「高いエネルギー価格がどこまで金融政策を縛るか」に移っているためだ。
4月28日の海外市場では、金はおおむね1オンス4,600ドル近辺まで水準を切り下げ、銀も73ドル前後へ軟化した。米10年債利回りは4.36%台、ドル指数も98台後半まで持ち直しており、非利息資産である金には逆風が強かった。Brent原油が103ドル台、WTIが99ドル台まで上昇したことで、インフレの再加速を警戒する見方が強まり、Fedを含む主要中銀がすぐに緩和へ傾くとの期待が後退している。金が売られたのは、逃避需要が消えたというより、高金利の長期化観測に押し負けた面が大きい。
4月のS&P GlobalフラッシュPMIも、金属市場にはやや複雑なシグナルを送っている。米国の総合PMIは52.0、製造業PMIは54.0へ持ち直したが、内容を見ると供給不安を見越した在庫積み増しの寄与が大きく、産出価格の上昇圧力も強まっていた。先進国全体でも、需要が力強く拡大しているというより、供給遅延とコスト上昇が景況感に混ざるスタグフレーション寄りの構図が意識されやすい。工業金属にとっては一見追い風に見える数字でも、最終需要の強さをそのまま示しているわけではない点には注意が必要だろう。
このため、シルバーは金の下押しと製造業改善期待の間で挟まれやすく、値動きは不安定になりやすい。プラチナとパラジウムも、自動車や製造業向け需要の見通しが重くなりやすい一方、供給が大きく緩んだとまでは言い切れず、方向感は出にくい。特に足元のPMIは「生産は下支えされるが、需要の質は強くない」という内容であり、PGMに対しても一方向の強気材料にはなりにくい。
銅はこの日、景気減速への警戒から上値を追いにくかったが、供給不安が下値を支えている構図はなお変わっていない。Goldman Sachsは4月21日時点で2026年の平均価格見通しを維持しつつ、ホルムズ海峡の混乱と中国の硫酸輸出停止が長引けば、銅生産に必要な硫黄・硫酸の供給が細り、コンゴ民主共和国やチリの生産に影響が出る可能性を指摘した。4月28日時点で銅先物は1ポンド5.97ドル前後へ軟化しているが、これは需要懸念を映した短期の調整であって、供給制約の懸念まで解消したとはまだ言いにくい。
総じて4月29日時点の金属市場は、金が安全資産として一方的に買われる局面でも、景気回復期待だけで工業金属が全面高になる局面でもない。原油高と供給障害がインフレとコストを押し上げ、その結果としてドルと金利が強含み、金属ごとに反応が分かれている。目先はFedの判断と、その後の金利・ドルの反応に加え、ホルムズ海峡の物流正常化が見えるかどうかが、ゴールドの下げ止まりと銅の再評価を左右する材料になりそうだ。