2026年4月30日の金属相場概況
4月30日朝時点で見ると、金属市場は地政学リスクそのものよりも、その結果としての原油高と金利高を強く意識する地合いに傾いている。29日の米市場では、FRBが政策金利を3.50%から3.75%に据え置いた一方、声明文の緩和方向をめぐって反対票が出る分裂色が意識され、利下げ期待はやや後退した。これに加えて、ホルムズ海峡を巡る供給不安から原油が一段高となり、インフレ再加速への警戒が金属全体の重しになった。
金と銀は、この局面では「有事の買い」よりも「高インフレで高金利が長引く」懸念に押された面が大きい。29日のCOMEXでは金先物が1オンス4,545ドル台、銀先物が71ドル台後半まで下げ、いずれもここ数日の戻りを失う形になった。中東情勢の緊張自体は本来なら安全資産需要を支えやすいが、今回は原油上昇を通じて米長期金利とドルを押し上げ、利息を生まない貴金属には逆風として効いている。
プラチナとパラジウムも、短期的には金と同じくドル高と実質金利上昇の圧力を受けやすい。加えて、自動車向け需要の先行きが世界景気に左右されやすいため、景況感が鈍る局面では金よりも戻りが鈍くなりやすい。ただ、ここで一方向に弱気と決めつけるのも早い。供給面では依然として余裕が大きいとは言いにくく、金価格が高止まりする限り、相対的に割安な白金族金属へ資金が戻る余地も残る。
銅は貴金属よりやや底堅く、29日のLMEでは小幅高となった。背景には、中国の連休前の押し目買い観測に加え、供給側の不安が消えていないことがある。Reutersが伝えたGoldman Sachsの見方では、中東情勢に伴う硫黄・硫酸供給の混乱と、中国の硫酸輸出停止方針が長引けば、チリやコンゴの銅生産に影響が及ぶ可能性がある。さらにFreeport-McMoRanは4月23日の四半期発表で、インドネシアのGrasberg鉱山の回復が従来想定より遅れる見通しを示しており、銅の下値では供給懸念が意識されやすい。
もっとも、需要側は楽観しにくい。S&P Globalの4月PMI関連資料では、世界景気の減速と同時に、企業の在庫積み増しや納入遅延、価格転嫁の強まりが指摘されている。これは製造業にとって、数量需要が強いというより「将来の供給不安に備えた前倒し調達」が含まれている可能性を示す。工業金属には一時的な支えでも、先行きの実需が素直に強いとまでは言い切れず、特に中国の4月PMIがこのあと弱めに出るようなら、銅や白金族金属の上値は改めて抑えられやすい。
当面の焦点は、原油高がどこまで長引くか、そしてそれに対してドルと米金利がさらに切り上がるかどうかだろう。原油と金利が同時に高止まりするなら、金・銀にはもう一段の調整圧力が残りうる一方、銅は供給不安が下値を支えるため、金属内でも強弱が分かれやすい。逆に、エネルギー市場の緊張が和らぎ金利上昇が一服すれば、売られ過ぎた貴金属に自律反発が入る余地もある。現時点では、地政学リスクをそのまま強気材料とみなすより、原油と金融条件を通じた波及を慎重に見た方が自然な局面に見える。