2026年5月第1週の金属市場週間レポート
2026年5月第1週の金属市場は、地政学リスクそのものよりも、それが原油、インフレ期待、ドル、金利にどう波及したかで金属ごとの強弱が分かれた週だった。ゴールドとシルバーには安全資産としての下支えが残った一方、原油高が利下げ期待を後退させたことで上値は重く、プラチナとパラジウムはそこに景気敏感さが重なって戻りが限られた。対照的に銅は、製造業指標の底堅さと供給制約の両方が意識され、相対的には下値の堅い週だったとみられる。
週を通しての共通材料は、原油高とそれに伴う高金利観測だった。Reutersベースでは5月1日の金相場は週間で下落基調にあり、高止まりする原油価格がインフレ懸念を強め、中央銀行の利下げを遅らせるとの見方が重石になった。週後半にはイラン協議再開観測で原油がやや緩み、ドルも一服して金属に短期的な買い戻しが入ったが、米4月雇用統計の公表は5月8日予定で、週末時点では金利見通しを大きく変える新材料はまだ出ていない。今週の値動きは、逃避需要よりも「高エネルギー価格が政策金利を押し上げる」という経路に市場が敏感だったことを示している。
需要面では、PMIが金属全体を単純に押し上げたわけではない。S&P Globalの5月1日公表データでは、4月の米製造業PMIが54.0、英国が53.6、日本が54.9とそろって拡大圏にあり、特に日本は約4年超ぶりの高水準だった。一方で同社の4月月報では、世界景気は原油高と供給遅延で減速しつつあり、在庫積み増しや納期長期化が景況感を押し上げている面も大きいと示されている。つまり、銅や銀にとって追い風になりうる製造業の強さは見えているが、それが最終需要の回復をそのまま意味するかはまだ慎重に見る必要がある。
ゴールドとシルバーは、そのねじれた環境を最も分かりやすく映した。5月1日のReuters報道では、金は週間でなお下落方向にあり、原油高がインフレ懸念と高金利観測を強める限り、地政学リスクがあっても上昇が続きにくい構図が続いた。もっとも、週末には原油の一服とドル軟化を受けて金が持ち直し、銀も反発したため、一方向の崩れというより高値圏からの調整と戻りを繰り返す局面と見るのが自然だろう。金が安全資産として完全に見放されたわけではなく、短期的には金利経路の方が価格決定力を持っていた、と整理できる。
プラチナとパラジウムは、金よりも景気と自動車需要の影響を受けやすい分、週内の戻りも限定的だった。週末には油価の落ち着きとともに小幅高となる場面があったが、パラジウムは依然として自動車触媒需要への依存が大きく、景気減速懸念が残る局面では評価が伸びにくい。プラチナも金属全体の反発にはついていくものの、金のような避難需要だけでは説明しにくく、工業需要の見通し改善が伴わない限り、力強いトレンド再開までは確認しづらい。今週の白金族金属は、貴金属というより景気敏感資産として扱われる時間が長かった印象がある。
銅は今週も他の金属より需給の話が通りやすかった。Reutersによれば、Freeport-McMoRanはGrasbergの回復見通しを従来の85%から約65%へ引き下げ、供給正常化の遅れを示した一方、Glencoreは第1四半期の銅生産が19%増の19万9,600トンとなったと発表した。ただし同社は同時に、ディーゼルや硫酸のコスト上昇が出始めているとも述べており、産出量が戻っても供給コストは軽くない。Hudbayも四半期収益の中心が依然として銅であることを示しており、企業側の決算や生産報告からは、銅が需要期待だけでなく供給制約とコスト高の両面で支えられていることがうかがえる。来週は雇用統計で金利観測がどう動くかに加え、原油が再び上昇するのか、それとも落ち着くのかで、金属間の温度差が続くかどうかを見極める局面になりそうだ。